大規模な環境問題として、酸性雨も挙げられます。
酸性雨という名前の響きから、とても恐ろしい雨のように感じられますが、具体的にはどのような影響があるのでしょうか。
また、酸性雨とは何が原因で発生してしまうのでしょうか。
酸性雨の原因や影響をご紹介します。
酸性雨は何が原因で降るのか
酸性雨とは、水素イオン濃度を表すph(ピーエイチ)が5.6以下の雨のことを言います。
雨はもともと酸性ではありますが、いつからか酸性が強い(phが低い)雨が確認されるようになりました。
そして、その雨は自然や人に悪影響があると考えられています。
酸性雨は何が原因で降るのか考えてみましょう。
・酸性雨は硫黄循環が関係
雨がもともと酸性なのは、自然の中に硫黄が循環しているからです。
これは大昔から続いている自然的な循環で、主な発生場所は海や火山となります。
海ではジメチルスルフィド(DMS)と言われる硫黄化合物が藻類の活動によって放出され、火山は噴火の際に硫黄化合物を排出します。
これらは放出されたとしても、自然の中に溶け込み、また海や火山から放出されます。
これを硫黄循環と言い、雨が酸性に傾く原因とも言える現象です。
・硫黄循環に影響を与えた人間
自然の流れによって、硫黄は環境の中を循環していましたが、この流れとは別に硫黄が発生することになります。
それは人間が化石燃料を使うことで、石炭や石油に含まれた硫黄が、硫黄化合物として自然に放出されることです。
それにより、硫黄酸化物が大気中に増加することになります。
・大気汚染が酸性雨の引き金に
1878年、R. Smithの論文「マンチェスターのスモッグ」の中で、酸性雨という存在が初めて言及されます。
石炭や石油の使用増大によって、排ガスが雨の酸性化を促進していると判明したのです。
そして、1950年代に入って間もないころ、酸性雨によるさまざまな影響が見られ始めます。
さらに汚染物質が見つからない国でも、酸性雨による被害が発生したことで、汚染物質が遠い国から移動してくることも判明しました。
この恐ろしい現象は日本でも起こっています。国立環境研究所の調査では、日本で観測される硫黄酸化物の49%が中国起源のものとされています。
人や自然に悪影響をもたらす酸性雨
国境を越えて被害をもたらす酸性雨ですが、具体的にはどのような悪影響があるのでしょうか。
酸性雨が人や自然にもたらす悪影響をご紹介します。
・森林の被害
酸性雨は木々を枯らし、森林に多大な被害をもたらします。
特にドイツのシュヴァルツヴァルトは有名で、第二次世界大戦後にこの地の木々は酸性雨によって、ほとんど枯死したと言われています。
また、木が枯れてしまうと同時に土壌汚染も懸念されます。
そして、砂漠化まで至ってしまうことも考えられ、そうなれば周辺の生物も死滅してしまうでしょう。
・海や湖と周辺生物の被害
酸性雨は海や湖に生息する生物を死に至らしめます。
海では有害プランクトン発生の原因となり、魚が汚染され、それを食べた人間も健康的な被害を受ける恐れがあります。
また、酸性雨は地下水まで流れ込むことも考えられ、人間の飲水にも汚染されてしまうかもしれないのです。
・建造物の被害
酸性雨はあらゆるものを溶かしてしまいます。
コンクリートや大理石も溶かしてしまうことから、建造物にも被害をもたらします。
歴史的価値がある建造物や彫刻、銅像も酸性雨によって錆びてしまう恐れがあるのです。
・人の健康にも被害が
酸性雨は生態系を通して人間に健康被害を与えます。
その一例としては、酸性雨によって海や川にアルミニウムが混ざって、人間の体に蓄積されるとアルツハイマーの原因になるとも言われています。
他にも、酸性雨の影響で髪の毛の色が変色する、喉や目の痛みなどの健康被害も発生します。
世界の酸性雨対策は?
このような酸性雨の脅威に、多くの取り組みによって被害を防ぐ動きが見られます。
国連欧州経済委員会(UNECE)によって、1979年に採択、1983年に発効された長距離越境大気汚染条約は、加盟各国に対し大気汚染防止に関する政策を求め、硫黄の排出防止策、酸性雨の研究、モニタリングの実施を推進しています。
ヘルシンキ議定書では、長距離越境大気汚染条約に基づき、国連欧州経済委員会に属する21ヵ国が、硫黄の排出量を軽減することに署名。こちらは1993年までに1980年時点の硫黄排出量を30%に削減することが目標でした。1994年以降は、オスロー議定書に置き換えられています。
他にも、ソフィア議定書や東アジア酸性雨モニタリングネットワークなど、酸性雨による被害を防止する取り組みが存在します。
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