動物の絶滅問題と聞いて、トキを連想する人はまだ多いことでしょう。しかし、最近はトキの噂を聞かなくなったように思えます。

 

トキは絶滅してしまったから、その後の話を聞かなくなってしまったのでしょうか。トキの絶滅とその後をご紹介します。

 

絶滅危惧の代表例?トキとは

トキはペリカン目トキ科トキ族に分類されます。日本を象徴する鳥として知られますが、これは誤った認識です。日本の国鳥はキジで、なぜトキと勘違いされるかと言えば、学名がニッポニア・ニッポン(Nipponia nippon)であるから、と考えられています。

 

中国や韓国など東アジアの広い範囲に生息し、ロシアにも分布しています。明治時代の初めまでは、北海道から九州まで、水田や湿地、海岸など日本の至るところで、トキは見られました。

 

そんなトキが1920年頃を境に、日本から姿を消してしまいます。日本のトキはなぜ個体数を減少させてしまったのでしょうか。

 

トキは絶滅してしまったのか

1878年、イギリスの鳥類学者であるトーマス・ブラキストン(Thomas Blakiston)は、東京湾岸でトキを見たと報告していますが、その後は人間の開発や密猟などによって、トキの減少が始まってしまいます。

 

まず、1894年から始まった日清戦争の影響で、日本の開発が進み、トキの生息地が奪われてしまいます。密猟については、トキの羽毛を手に入れるために乱獲されていました。さらに、当時の日本は貧しかったこともあり、輸出品目にトキも入れていました。

 

1908年にトキの激減が問題となり、保護鳥として指定されましたが、密猟による減少が止まりませんでした。1934年には天然記念物に、1952年には特別天然記念物に指定されますが、トキは佐渡や能登で数える程度に見られる程度まで減少していました。

 

1967年にトキ保護センターが開設され、1981年には最後の野生トキが保護されます。それにより、日本の野生トキは絶滅したことに。その後も人間によって繁殖が試みられますが、2003年に日本最後のトキは死亡してしまいました。

 

トキの繁殖により野生化に成功

2003年に日本産のトキは絶滅してしまいますが、1998年に中国から贈呈されたトキのつがいが飼育されていました。そして、そのつがいによる繁殖が成功。1999年にヒナが誕生しました。

 

さらに、その後は順調に人工授精が成功し、飼育数も増加します。2007年に野生復帰の訓練も行われ、放鳥も続けられることになりました。2012年には、放鳥されたトキが野生で繁殖したことも確認され、8羽が巣立ちます。

 

それから少しずつ繁殖数が増え、2017年には92羽のヒナが誕生し、77羽が巣立ちました。2018年には60羽、2019年には95羽、2020年は67羽と多くのトキが巣立っています。

 

トキだけではない!絶滅が危惧される動物

日本産のトキは絶滅してしまいましたが、中国からの贈呈によって、国内でも再び繁殖が確認されるようになりました。しかし、トキとは違ってこの世界から種が失われてしまった動物は数えきれないほど存在します。

 

それは人間の活動が原因によって失われてしまったものが多く、現在も同じような事例で減少しつつある動物が存在します。

 

私たちは動物の生を脅かすことがないよう、エコや環境問題を解決するようなアイディアを常に考えなければならないのかもしれません。