日常的に使うものが壊れてしまったら、ほとんどの場合は買い替えてしまうことでしょう。

 

しかし、買い替えるよりは、もう一度使えるようにした方が、資源を無駄にせず地球に負担を与えないことは確かです。

 

かつては、そんな技術を持つ職人「鋳掛屋」が存在しました。

 

鋳掛屋とはどんな職人で、どのような技術を持っていたのでしょうか。

 

修理の達人!鋳掛屋とは?

鋳掛屋とは、鍋や釜のような金属製の道具を修理する職人で、江戸時代から昭和期にかけて活躍しました。

 

以前は金属製の道具はとても貴重で、壊れてしまったら買い替えるのではなく、修理することが一般的でした。

 

鋳掛屋による道具の修理は、穴があいてしまった個所や傷んだ箇所に、溶かした金属を流してつなぎ合わせる方法です。

 

このような修理方法と、溶かした金属を型に流し込む製品を鋳物(いもの)と言うことから、鋳掛屋と呼ばれたのです。

 

昔の技術では、金属の道具は穴ができやすく、月夜に釜を抜かれるという言葉があるくらい、盗まれやすい貴重品でした。

 

簡単に買い替えられるようなものではなく、ほとんどの人は金属の道具が壊れても、何度も修理を繰り返していました。

 

そのため、鋳掛屋のような修理職人は大変活躍していたのです。

 

鋳掛屋が使う道具や技術

鋳掛屋は金属を切る鋏や、金属を叩くハンマー、鉛を溶かす耐熱容器を使用していました。

 

このような道具を使って、鋳掛屋はさまざまな技術を駆使し、金属の道具を修理します。

 

鋳掛屋はどのような技術を使っていたのでしょうか。

 

・茶碗を修理する「金接ぎ」

茶碗やどんぶりが割れてしまったら、現在では修理して再び使おうと考える人は少ないはずです。

 

しかし、かつては鋳掛屋によって修理してもらっていました。

 

その修理方法は金接ぎという技術で、茶碗の割れた箇所を漆で接着させるものです。

 

さらに割れ目に沿って金の装飾を施すことで、修理した部分を逆に独特な趣が出ることから、大変人気な修理方法でした。

 

・のこぎりを研ぐ「目立て」

のこぎりは使っているうちに、歯が鈍ってしまいますが、鋳掛屋はそれも修理していました。

 

それは「目立て」という技術で、のこぎりの歯を一つひとつ専門のヤスリで研ぐというものです。

 

大変細かい作業で時間がかかってしまうように思えますが、プロの技術にかかれば非常にスムーズなものです。

 

・布団の心地よさを取り戻す「打ち直し」

金属製の道具を修理するだけでなく、鋳掛屋は布団のメンテナンスも行っていました。

 

長く使ったことで湿気を吸い、薄くなってしまった布団を新品のような心地を取り戻させます。

 

それは「打ち直し」と言って、布団の綿を取り出してほぐし、不足した分を補充する技術です。

 

・まな板も新品のように

鋳掛屋はまな板もメンテナンスしていました。

 

天然木のまな板は、使っていると削れたりへこんだり、汚れが染みついてしまうこともあります。

 

鋳掛屋は鉋(かんな)を使って、表面を削ることで新品のように生まれ変わらせました。

 

鋳掛屋の衰退!現代こそ大事な職業?

このように、さまざまな技術によって人々の生活を支えてきた鋳掛屋ですが、昭和30年代に入ると衰退していったと言われています。

 

衰退してしまった理由は、日本が大量生産・大量消費の時代に突入してしまったことで、修理の需要がなくなったからです。

 

さらに、金属製品の価格も下がったこともあり、鍋や釜が壊れても買い替えることが一般的になってしまいました。

 

そのため、金属製品を修理するという意識が薄くなり、製品の質も向上したことで、壊れることが少なくなったのです。

 

ただ、鋳掛の技術は今も必要とされ、鐘や茶碗の修理に使われています。

 

現在は世の中が便利になったことで、最後までものを使い切ることなく、すぐに捨ててしまうことも多いでしょう。

 

しかし、環境問題や資源の枯渇が不安視されている世の中でもあります。

 

今こそ、鋳掛屋のような修理技術が必要とされているかもしれません。

 

もし、ちょっとした手間や工夫で壊れたものを再利用できるアイディアがあれば、ぜひ「えことぴ」で共有してみてください。