観光地として世界的に有名なイタリアの都市、ベネチア。毎年、多くの観光客が訪れるベネチアですが、このままでは水没してしまうのではないか、と言われています。

 

ベネチアはなぜ水没の危機に晒されているのでしょうか。ベネチアを悩ませる水没の危機をご紹介します。

 

ベネチアが水没する?原因は温暖化か

ベネチアでは昔から「アックア・アルタ(acqua alta)」という現象が起こります。アックア・アルタはイタリア語で満潮を指す言葉で、大潮や低気圧、シロッコと言われる局地風が重なると、高潮が発生します。そのとき、ベネチアの街には水が入り込み、至るところで浸水が起こるのです。

 

どれだけ水位が上昇するかと言うと、人の膝の高さまで浸水し、まともに歩けない場所も出てきます。ベネチアの観光名所であるサン・マルコ広場に関しては、ほとんど水没状態になってしまうほどです。

 

この現象は、人間が地下水をくみ上げるようなり、地盤沈下が激しくなったことが原因だと考えられています。水の都と言われるベネチアならではの景色とも言えますが、水没する水位は年々上昇しています。このままでは、ベネチアがアドリア海に沈んでしまうことも考えられるのです。

 

過去50年で最悪!ベネチアの大部分が浸水

2019年11月12日の夜、観測史上2番目となる高潮によって、ベネチアの大部分が浸水しました。この浸水の水位は、ここ50年の中では1番の高さであり、ベネチア市長であるルイジ・ブルニャーロ市長は、気候変動が原因であると発言し、政府に早急な対応を求めました。

 

水位は1メートル87センチに達し、人気の観光地が水没。特にサン・マルコ広場は深刻と言える大きな被害を受けました。さらに、この影響で男性が感電死するといった二次被害も発生。温暖化は悪化する一方です。このままでは、ベネチアはさらなる被害を受けてしまうと考えられるでしょう。

 

ちなみに、ベネチアの潮位監視予報センターが観測した、最も高い水位は1966年の1メートル94センチです。

 

ベネチア水没を逃れる「モーゼ計画」が完成

ベネチアの水没を避けるため、イタリア政府はある計画を立ち上げます。その名も「モーゼ計画」です。これは「MOdulo Sperimentale Elettromeccanico」の略で、高潮被害を防ぐために作られた巨大水門で、ベネチアにある3つの水路に可動式のゲートを設置し、海水を食い止めるものです。

 

この計画、1980年代には設計され、2003年には開始されていましたが、当初の予想よりも建設費がかかってしまったこと、汚職やスキャンダルの影響で、完成は延長され続けました。

 

なかなか完成しなかったモーゼシステムですが、2020年10月に初の海面上昇時のテストが行われました。テスト時の水位は1メートル25センチと予想されていましたが、モーゼシステムの軌道により、70センチに抑えるという結果に。モーゼシステムは今後100年見込まれる海面上昇の影響も織り込まれていると言われています。

 

ベネチアの水没は文化も失われる恐れ

 

ベネチアの水没は、モーゼシステムが完成することで、ある程度は軽減されるかもしれません。しかし、この水没は温暖化が関係していると考えられています。温暖化は現在も悪化しているため、ベネチアが水没してしまうことは、まだあり得ることかもしれないのです。

 

これは、温暖化は環境を変化させ、人間の文化にも影響を与える例だと言えます。私たちは自然や文化を失わないためにも、環境を意識しなければなりません。もし、環境への負荷を抑えるアイディアがあれば、ぜひ「えことぴ」で共有してみてください。