この世界には、人類の宝として残されている建造物や自然があります。それを世界遺産と言って、各地に存在していますが、中には危機的状況に晒されていることもあります。

 

インドの世界遺産、タージ・マハルもその1つで、近い将来に失われてしまうことが危惧されています。タージ・マハルはどのような問題を抱えているのでしょうか。

 

タージ・マハルとは?インドの世界遺産

タージ・マハルとは、どのような世界遺産なのでしょうか。タージ・マハルは、インド北部の都市である、アーグラの建築物であり、イスラム文化の代表とも言える観光名所です。

 

インドには、16世紀初頭から19世紀の後半までムガル帝国というイスラム王朝がありました。この王朝の第5代君主、シャー・ジャハーンが愛妃ムムターズ・マハルのために、墓廟として建造したものが、タージ・マハルです。病気によって命を落としたムムターズ・マハルが、遺言として残した「後世の残る墓を作ってほしい」という願いに応えるため、シャー・ジャハーンは巨大な総大理石のお墓、タージ・マハルを建造しました。

 

タージ・マハルの建造は、1632年に始まり、1653年に完成しました。奥行きは57メートル、高さは58メートルと巨大で、その造形の美しさから、1983年に世界遺産に登録されます。そのため、タージ・マハルは観光地として有名であり、人類が残すべき遺産と言えるのです。

 

タージ・マハルが変色?環境問題で消失の危機か

総大理石による純白な外観が特徴であるタージ・マハルですが、変色していると話題になっています。薄い黄色へと変色しつつある原因は、大気汚染と水質汚染だと考えられています。

 

アーグラでは以前から、二酸化硫黄と粒子状物質の濃度が高いと指摘されていました。これらの物質が雨と混ざり、酸性雨になったことで、タージ・マハルを変色させてしまったのです。

 

これと関係している環境問題が、タージ・マハルの傍を流れているヤムナー川の水質汚染です。ヤムナー川は世界で最も汚染された川と言われ、デリーやアーグラの工場から垂れ流された化学物質や廃棄物によって汚れ、ハエや蚊が大量発生しています。

 

また、地下水を過度に汲み上げていることから、地盤が沈下し、タージ・マハルの尖塔が傾いていることも問題視されています。何らかの対処をしなければ、タージ・マハルは変色し、最悪の場合は崩壊してしまうかもしれません。

 

インドは深刻な環境問題に直面している

インドではタージ・マハルの他にも、多くの環境問題が懸念されています。

 

特に大気汚染は深刻な問題で、人々の健康に被害を及ぼしています。危険な微小粒子状物質であるM2.5は、推奨値の24倍となり、視界も悪くなるほど空気が濁っている場合もあるのです。そのため、そのような地域に住む人々は、外科手術用のマスクを着用し、学校は閉鎖され、抗議活動が行われています。

 

大気汚染の原因は、石炭を燃やす工場や、車による排ガスが非常に多いこと。それにより、病院は呼吸器の異常を訴える患者に溢れ、新型コロナウイルスの感染者増加も懸念されています。

 

このままでは、タージ・マハルが失われるだけではなく、インドに住む人々は大変な健康被害を受けてしまうのです。

 

タージ・マハルが消失しないためには

インドは急成長によって経済発展を遂げていますが、大気汚染に悩まされています。このような環境問題はタージ・マハルだけはなく、人々の健康にも関わるものです。

 

だからと言って、経済活動のすべてを止められません。私たちは、経済活動と環境負荷のバランスを考える必要があります。そのためには、エコやサスティナブルなアイディアが必要です。もし、そのようなアイディアを思いついたら、ぜひ「えことぴ」で共有してみてください。