日本にも世界遺産はいくつかありますが、富士山はその中でも代表的な存在と言えるのではないでしょうか。そんな富士山は遠くから見れば、壮大な自然を思わせてくれますが、実はゴミ問題を抱えています。

 

富士山はどのようなゴミ問題を抱えているのでしょうか。富士山のゴミ問題と、それに深い関わりがあるトイレ事情をご紹介します。

 

富士山は世界遺産なのにゴミ問題が…

富士山は日本を象徴するような世界遺産だと言えます。世界遺産は、自然遺産、文化遺産、複合遺産とありますが、富士山はどこに分類されるのでしょうか。

 

自然遺産は、自然現象や景観、動植物の生態系が重要視されます。文化遺産は、建築や芸術の美しさ、歴史などが評価されます。そして、複合遺産はその両方を兼ね備えたものになります。

 

富士山は、あれだけ雄大な自然を見せているため、自然遺産だろうと思ってしまうかもしれませんが、実はそうではありません。富士山は、自然な美しさではなく、富士信仰が育まれる霊峰という側面、葛飾北斎の富嶽三十六景を始めとする、芸術の題材となる側面が評価され、文化遺産として世界遺産に登録されました。

 

1990年代から、富士山の自然遺産登録は検討されていました。しかし、固有の生態系が存在しないこと、環境管理の問題が適していないと判断されてしまいます。それでは、富士山が抱える環境管理の問題とは、どのようなものなのでしょうか。

 

富士山のゴミ問題は排泄物まで

富士山が抱えているのは、ゴミ問題です。富士山は遠くから見れば美しい景色ではありますが、実際は観光客のマナー違反により、お弁当やペットボトルといったゴミが散乱しています。特に外国人観光客のマナーに悩まされていることは、有名な話です。

 

さらに恐ろしいことは、ただのゴミだけではなく、人間の排泄物まで捨てられていることです。それは、登山道から離れた場所で10ヵ所以上、排泄物が発見されるほど、決して少なくありません。そのため、とても美しい自然を満喫できる場所ではなく、富士山は自然遺産として登録されませんでした。

 

また、世界遺産は6年に1回という頻度で、保全状況を報告し、世界遺産委員会から再審査を受ける必要があります。その審査により、価値が損なわれてしまったと判断されてしまったら、世界遺産の登録が取り消されてしまいます。

 

富士山のゴミ問題とトイレ事情

このような状況は、富士山のトイレ事情も関係しています。

 

以前、富士山に設置されていたトイレは、浸透放流式でした。浸透放流式のトイレは汚物が垂れ流しになるもので、トイレットペーパーが白い川のようだと揶揄されるほど、ひどい状況だったと言われています。1997年から改善され、2006年には環境配慮型トイレに変更されましたが、すべての問題が解決されたわけではなく、排泄物が発見されるといった問題は続いています。これは、登山ルートによってはトイレの設置が少ないことや、有料でトイレを利用したくない、トイレに並びたくない、外国人観光客の価値観の違い、といった原因が考えられています。

 

このような状況を改善するため、富士山は2013年から任意で入山料を支払う制度が導入されました。しかし、お金を支払ったことで開き直ってしまうのか、平気でゴミを捨てる人間が増えたのではないか、という意見もあります。他にも、富士山で不法投棄の問題もあり、環境管理が非常に難しい状況となっているのです。

 

富士山をゴミで汚さないように

この世界には美しい景観を見せてくれる世界遺産は数々あります。しかし、富士山のように観光客のマナーによって損なわれてしまう恐れがあります。

 

そんなことが続いてしまわないように、私たちはどのような問題が起こっているのか、広く知る必要があります。もし気になる環境問題や改善の取り組みがあれば、ぜひ「えことぴ」で共有してみてください。